Game Developers Conference 2009現地レポート−GAME Watch

http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20090327_80032.html

崎元氏のメッセージは非常に明快だった。「ゲームコンポーザーは個性を出すことが大事であり、個性のないコンポーザーは存在する価値がない」。崎元氏はセッションの冒頭でこう結論を切り出し、1時間の講演の中で同じ表現を何度も繰り返した。

若手に対するアドバイスとして、「マニピュレートに関して、たとえばドラムを使いたいとします。その中でバスドラムに話を区切っていった場合、なぜバスドラムが必要なのか考えないのではないか。考えるためにはバスドラムは何者であるかという知識がいるし、バスドラムバスドラムである理由やその効果を発揮する方法も全部考えなければならない。PSGでドラムを鳴らすというのはハナから無理難題のような気がしますが、必要最低限の要素、再現する方法を考えることによって、その機能を果たさせることは可能だと思う。当時はそれを強いられたわけだが、そういう訓練は今の時代も本当は必要なこと」と、限られた環境下で結果を出していく訓練の大切さを強調した。

崎元氏は、大前提として「進歩の成果を自分で噛みしめることが大事」と切り出し、そのために「個性を表現しながら、技術を学んでいくことが重要」だとした。この前提を満たすための日々の研鑽が大量に提示された。

崎元氏は、さらに音楽の聴き方についても言及し、「最初に自分が聞いた感想と、世間一般の評価の予想、プロとしての曲の解析結果の3つを、それぞれ厳密にわけてリンクさせて覚えておく必要がある。ゲームをやって『楽しかった』で終わるのはかまわないが、それでは勉強ではないということです」という。

“曲の解析”については、「これは音楽に限った話ではないが」と前置きした上で、「手順を踏んでやってほしい。まず、好きな曲を聴き、なぜこの曲が良いのかを考える。自分で仮定を立てて、その仮定を自分の曲でもやってみる。自分で聞いてみて結果を精査する。そこで良い効果が出ていなければ仮定付けから戻ってそれを何度も繰り返す。そのターンをいくつやったかで経験の量が決まってくる。だから意識してやってほしい」と詳しく解説。

崎元氏は「作曲家としてあるべき論」のまとめとして、「なんとなく綺麗な曲、凄い曲を書く人、技術的にレベルの高い人はたくさんいる。そういうところで勝負するのではなく、この人しかこの曲は書けないという立場を目指すべきだと思っている。技術的な問題は後で学べるし、時間も作れるので、1番最初から個性を発揮する姿勢で作曲に臨むことが重要だと思っている。個性は技術に比べて磨くのに時間がかかるので、意識してやらなければならない。やっていなかった人は今からでもすぐにやるべき」と参加者に発破を掛けた。

Q: 技術と個性どちらが大事か?

A: ここは言い足りなかった部分。個性は繰り返し重要だといっているが、技術がなければ表現できない。勉強で学べる和声や他人の音楽を学ぶことに関しては、あくまで自分の個性を表現する手段として使ってほしい。どちらが重要かという質問については、人の経験を学ぶことが時間があればできることなので、日々考えなければいけないことは個性を磨くことだと思う。