全裸男子フィギュアが16億円なワケ〜『現代アートビジネス』 小山登美夫著(評:栗原裕一郎):NBonline(日経ビジネス オンライン)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080521/158073/

プライマリー・プライスとはギャラリーで展示販売されるさいにつけられる値段のことで、作家ごとに設定された基準にしたがい、サイズと素材で決定される。


一方、セカンダリー・プライスは、市場で二次的に売買されるときの価格である。

作品(作家)の価値が上がる頃合いを見て、コレクターは作品をオークションにかけるわけだが、格式あるオークションに出品されるということは、それだけで評価がある程度定まっていることを意味するから、リスクを避けたい投機筋などがこぞって落札する。その差額でコレクターはふたたび若くて名もない作家の作品を買う。そういう理想的サイクルのことを著者は「成熟したマーケット」と表現している。

アート・マーケットがバブルの兆候を呈していることは数年前から指摘されてきている。とくにアジア・アートは、アジア限定で囲い込まれたマーケットに新富裕層のカネが流れ込み、ほぼ完全に投機市場と化しているという。

「トレンド・セッターたちは、新聞や雑誌、後にはテレビを使って作家の業績を解説し理解を広めようとする。しかし、それはトレンドとして選ばれた作品を賞賛することで、ひいてはパトロンたち(コレクターのこと──引用者註)の出費を正当化していくことなのである。つまり、表向きは作家、もしくはその作品の批評をしながら、実はパトロンの権威を盛り立てるのが隠された本当の仕事なのである」


村上が嫌われるのはこういう露悪ぶりによるところが大きいと思われるが、小山は〈歴史の中の美術としてどうなのか、それこそが重要なのです〉〈歴史やコンセプト(例えばオタク文化と欲望の問題など)が色濃く反映されているかどうかも、美術にとって非常に重要なのです〉と、戦略性も作家性にひっくるめて評価している。